酒母というか、もはや赤ちゃん
前回「生酛仕込みは水分管理に続く」の続きです!
酒母を造る上でもっとも重要なのは「衛生的で元気の良い酵母を多数培養する」こと。酒母の段階では酵母数が少なく、アルコール濃度も低い為に非常にデリケート。まさに生まれたての赤ちゃん状態です。通常の酒母は「乳酸」を添加して酸度を上げる事で清酒酵母以外の菌の淘汰をするのですが、生酛仕込だと一から乳酸菌を沸かせて酸度を上げていかなければならないので、さらに雑菌汚染の危険度は高くなります。
生酛でなおかつ綺麗な酒質の日本酒を造るには『硝酸還元菌→乳酸菌→清酒酵母菌』の菌リレーを一部のミスなくすすめなくてはなりません。
暖気操作とは
要は酒母を人為的に温める作業です。酒母タンクの中では糖化(麹が米を溶かして糖にかえる)と酵母増殖(酵母が糖分を食べて醗酵&増殖しアルコールを吐き出す)が同時に行われています。このバランスを失敗すると酸や苦味が浮いたり味が薄いといった不調和な日本酒に。。。。
良い酒母を造るには糖化と酵母増殖をバランスよく進めるに暖気操作が必要になります。
笹祝酒造では、それなりに仕込み量が多くかつ速醸酒母の時は「行火(あんか)」という方式で、生酛の時や極少量仕込みの時のように精密な温度操作が求められる時は「暖気樽(だきだる)」を使用した方式で暖気を採用してます。
「行火」はタンクの底にコタツのようなヒーターを設置して外から温めるやり方。「暖気樽」は中に湯を入れた容器を酒母の中に沈めて内から温めるやり方です。
暖気樽による暖気のやりかた①暖気樽(笹祝はチタン)にお湯を張る
温度がムラにならないよう等間隔で落とす
暖気樽方式って、とても手がかかる!
笹祝の酒母は生酛以外ほとんど行火式です。なぜならとても面倒だから。行火はスイッチon/offで簡単に温度を上げることが可能ですが、暖気樽で温度を上げるには①温度調節した湯を用意②樽を綺麗に洗浄し③一本一本タンクに挿入
温度を測る為に抜き出した後、目標に達していなければ①②③を再度繰り返し。樽を抜き差しする度雑菌を酒母の中に入れてしまうリスクを負いますし、樽にこびりついた物料分、量が欠減して損した気分になったり(笑)
それでも暖気樽で温度操作を行うのは生酛酒母が細かいコントロールが必要な、とてもデリケートな仕込み方だからです。温度2度上げて、そのあと1度下げてみたいな事を毎日行います。
行火操作は楽ですが、タンク底板面のみ熱くなる仕組みなので加熱が不均一だったり、逆にピンポイントなコントロールが出来ない為に、笹祝のような仕込み量での生酛には向きません。
暖気樽だからできる!技法集
暖気樽は中の温度を調整したり、本数を増やしたり細かいマニュアル操作が利きます。日本醸造教会のテキストに暖気樽の技法がいくつか載っていたので紹介します
①留暖気(とめだき)・・・酒母に挿入した樽を動かさないで置くこと。生酛の酒母は水分が少なく熱伝導が悪い為、樽周辺は熱くなるものの、全体の温度上昇はほとんどなく、酵母の増殖を抑えながら糖化のみが促進されます
②温湯留暖気(おんとうとめだき)・・・酵母の湧きが悪い時に行う手法。中温で糖化をおさえつつ、樽に触れている温度の高いエリアで集中的に酵母を増殖させる
③留廻し(とめまわし)
水気が少なくノリっぽい時に行う手法。当かを促進させるため樽を酒母タンクの中でぐるぐる廻す
うーむ、、、奥が深いな暖気樽。
☆「生酛仕込みは水の準備から始まる」はコチラ
https://sasaiwaishuzo.blogspot.com/2020/01/blog-post.html
☆「生酛仕込みは水分管理に続く」はコチラ
https://sasaiwaishuzo.blogspot.com/2020/01/blog-post_18.html
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